妊娠は、「赤ちゃんがほしい」と願って数回の性行為で授かることもあれば、どれだけ回数を重ねてもなかなか成立しない場合もあります。
そして避妊していたつもりでも、たった1回の性行為でも、新たな命を運んでくるときがある。

妊娠って本当に神の領域だと思っています。
体外受精などの技術が発展し、昔なら授かれなかった命が生まれるようになったのも事実です。
でも病理医をしていると不思議な症例があったり、産婦人科の先生とお話しをしていても「なんでだろうね?」と思う症例があります。
避妊方法についてはすでに多くの方が詳しく解説していますので、今回は病理医としての視点から妊娠についてお話しします。
受精:生命のはじまり
妊娠は、精子と卵子が受精することから始まるのは皆さんご存じだと思います。
たくさんの精子が切磋琢磨しながら、子宮の中を泳ぎ、卵管で卵子が待っていることを信じて進んでいきます。
- 射精時:約2~5億個の精子が放出
- 子宮頸管通過:約100万個に減少
- 卵管到達:わずか数百個
- 最終的に受精できる:通常1個



これって、よく考えたらすごくないですか?
精子は、もともと男性(XY遺伝子をもつ人間)の精巣の中にいて、突然自分の身体とは違う女性(XX遺伝子を持つ人間)の身体の子宮に入り、何の疑いもなく進んでいく。
そして子宮も通常ならば、自分以外の細胞は異物であるはずなのに、それを受け入れて卵管まで到達するのを見守る。
「動物の種の保存でしょ」と言われればそれまでなんですが、私は生命の神秘を感じてしまいます。



今後、解説をつけたものを作る予定です。
着床:生命が根を下ろす
受精卵ができても、まだ安心はできません。
妊娠を継続するには、子宮体部という赤ちゃんが育つ場所に到達し、子宮内膜にしっかりと結びつく必要があります。
その後、赤ちゃんへ酸素や栄養を届ける胎盤が問題なく形成されることも重要です。



胎盤が完成するとお母さんのつわりがおさまるといわれています。
そもそも受精卵に致命的な遺伝子異常がないことが妊娠の絶対条件です。
妊娠から出産
これらのハードルを乗り越えても、稀にお腹の中で命が終わってしまう赤ちゃんもいます。
お母さんと赤ちゃんをつなぐ命の綱である臍帯に流れる血液が何かの影響で遮断されてしまったり、赤ちゃん自身に何か病気があったり、胎盤の状態が赤ちゃんにとって十分機能していなかったり。
お母さんがいくら気を配っていても、必ずうまくいくわけではありません。
妊娠が自然に途切れてしまうこともあれば、医療的な判断によって終わらせなければならない場合もあります。
- 喫煙(流産、早産、低出生体重児のリスク増加)
- アルコール(胎児性アルコール症候群のリスク)
- 過度のカフェイン(1日200mg以下が推奨)
- 生の魚介類、生肉(感染症のリスク)
病理で胎盤を顕微鏡で見ていても、とっても状態が悪く見える胎盤でも赤ちゃんは全然元気なときもあるし、胎盤の状態はとてもいいのに、赤ちゃんがしんどい状態で生まれていることもあります。



改めて妊娠・出産って不思議だなと思います。
私の妊娠エピソード
私はこれまでに4回出産を経験しています。
4回目の出産のとき、陣痛の合間に不妊にご利益があるといわれる「富士山の絵」を描きました。
当時、同じ職場で不妊治療をしている方がいたので、描いて渡せたらいいなと思っていたのです。
ただ、少しハードボイルドな性格の私は、ネットで見かける可愛らしくて上手な富士山の絵に疑問を抱いていました。



陣痛が来ているときに、あんなに丁寧な絵は描けないはずだと。
陣痛の合間に描くのではなく、真っただ中に描いてこそご利益があるのでは?と思ったのです。
そこで私は、3分間隔くらいの陣痛が来ているときに筆をとりました。
「ぐぬぉぉ~」とか「ぬふぅぅぅ」と唸りながら2枚目を描き終えたあたりで、家族から「もういいから産むのに集中して!」と止められました。



本当は5枚くらい描こうと思っていたのですが。
完成した富士山の絵は、幼児の落書きのように拙いものでした。
それでも効果があったのか、これまで7人の方に写真をお送りしたところ、そのうち5人が出産を経験されています。
しかも、その5人はいずれも「絶対に妊娠したい」と強く願っていた方々でした。



プラシーボ効果なんでしょうか(笑)
偽の薬を飲んで、症状が緩和すること。飲んでいる本人は偽の薬とは知らされていません。
まとめ
妊娠は現代医学の発達により多くのメカニズムが解明されていますが、依然として不思議な部分が残されています。
だからこそ、授かる命はいつも特別であり、奇跡のように感じられるのかもしれませんね。
私自身も4回の妊娠・出産を経験し、素晴らしい体験をさせてもらったと思っています。



赤ちゃんを望む方の願いが叶いますように。