乳癌と診断されてKi-67が高く出た数値を見て、絶望的な気持ちになっていませんか?
「増殖スピードが速い」「予後が悪い」といった言葉ばかりが目に入り、ご不安に思われるお気持ちは本当によく分かります。
しかし、Ki-67の数値だけで全てが決まるわけではありません。
今回は、病理医の見解としてKi-67の数値との向き合い方についてお伝えします。

ぜひ前向きに治療に取り組むための参考にしてください。
Ki-67が高い=癌細胞の活動が活発
Ki-67とは癌細胞が増えるスピードを表し、ある一定の条件では、乳癌の予後を予測する因子とされています。
具体的には、細胞分裂を行っている癌細胞の割合をパーセンテージで示されます。
つまり、Ki-67が高いほど癌細胞の増殖が活発で、低いほど増殖が穏やかと言えます。



ただし、「活発=悪い」という単純な解釈ではありませんよ。
Ki-67について詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。


Ki-67の染色パターンから読み取れること
Ki-67は、細胞の成長段階で染まり具合が異なるとされています。
薄く染まる細胞であっても、濃く染まる細胞であっても、陽性細胞と認識されます。



診断している中での印象として100%に近い数であればあるほど、ほとんどの細胞が濃く染まっている印象があります。
つまり、「増えようとしている癌細胞の成長段階が均一であることを示している」と考えることができます。
私は、これは薬の治療において大切だと思っています。
色んな成長段階の細胞がいるより、癌細胞がみんな同じ段階にいる方が薬のターゲットになりやすいはずだからです。
わかりやすく例えると
1人の人間が、5人の子供に勉強を教える場合を考えてみてください。
1歳、3歳、5歳、9歳、15歳の子供にそれぞれの勉強を教えるよりも、5人全員が9歳の子供である方が楽だし効率もいいですよね。





抗がん剤治療も同じようなイメージです。
細胞分裂の様々な段階にある癌細胞が混在している場合よりも、多くの癌細胞が同じような分裂段階にある方が薬剤が効果的に作用しやすいと考えられます。
もちろん、Ki-67が80%や90%と書かれていれば、10%未満の数値と比べて強い印象を受けるのは当然です。
ただ、数値が高いという事実にばかり心を奪われてしまうのは、少しもったいないと思います。
Ki-67の値はあくまでひとつの指標にすぎません。
80%という数値そのものは変わらなくても、濃く染まっている細胞ばかりの80%なら治療効果が高い可能性があります。
つまり、「治療がよく効く細胞がたくさんある」と前向きに捉えることもできるのです。
このような柔軟な視点で治療に臨むことが、良い結果につながるかもしれません。
乳癌ではこうしたアプローチが可能ですが、他の臓器の癌では必ずしも当てはまらない場合も多いです
これが現在の乳癌治療の大きな特徴だと思います。
まとめ
Ki-67の数値が高いと、不安になるのは自然なことです。
けれど、その数字だけで未来が決まるわけではありません。



ポジティブに考えて気持ちを穏やかに、治療に向き合っていきましょう。