病理診断において、核分裂像のカウントは重要な評価項目の一つです。
ただ、現場では医師によって判断が分かれやすく、評価のばらつきが起こりやすい部分でもあります。
特に、核異型度や組織学的グレードの判定に関わる核分裂像は、どのように数えるかで診断結果に影響を与えることがあります。
この記事では、私が実際に行っているカウントの手順とその際に感じる難しさについてお話しします。
核分裂像とは
核分裂像(mitotic figure)とは、細胞が分裂している最中の核の形態を指します。
細胞分裂の過程で、核内のDNAが凝縮して染色体となり、特徴的な形態を示している状態です。
がん細胞では正常細胞よりも活発に分裂が行われるため、核分裂像の数は腫瘍の増殖能や悪性度を反映する重要な指標となります。
そのため、乳がんをはじめとする様々ながんの病理診断において、核分裂像のカウントは治療方針の決定や予後の予測に欠かせない評価項目となっています。
私の核分裂像カウント方法
ここでは、私が実際に行っている核分裂像のカウント方法を紹介します。
まずは分裂像を意識しながら、癌のある部分を中拡大(×10〜×20程度)でざっと観察します。
その時点で、分裂像が「多そう」「少なそう」「どちらともいえない」といったあたりを付けます。
このあと、拡大を上げて、まず1個目の核分裂を見つけた段階からカウントをスタートします。
そして10箇所の見えている範囲に核分裂像が何個あるか数えます。
強拡大で50箇所以上探しても1個目が見つからないことがあります。
そんな時は、カウントせず『1点』にします。

こんな感じです。
核分裂像カウント時の課題
病理診断では再現性が非常に重要とされていますが、核分裂像のカウントは医師間で統一が難しい項目の一つです。
例えば、核異型度であれば「癌取扱い規約」に掲載されている参考写真や、正常乳管上皮細胞の何倍かという比較基準があります。
ところが、核分裂像にはそのような明確な比較対象が少なく、観察する部位がわずかにずれるだけでカウント個数が変わってしまいます。
また、「分裂像」とひとことで言っても形態はさまざまで、どこまでをカウント対象とするか迷うことも少なくありません。
実際、私自身も「核分裂像が多い」と判断していた症例で、Ki-67が非常に低く、見直してみたところ核が変性している像を分裂像と誤認していたことがありました。


核グレード、組織学的グレードどちらにも「核分裂像」の項目が含まれていますが、パッと見て一律に判断できるものではありません。
そのため、ある程度の変動はあると思ってもらった方がよいと思います。




まとめ
核分裂像のカウントは病理診断において重要な評価項目でありながら、標準化が困難な分野でもあります。
観察する視野や拡大率、分裂像の判定基準によって結果が変わりやすいため、医師間での差異が生じやすいのです。
それでも、がんの悪性度や治療方針の決定に欠かせない情報であることに変わりはありません。