最近、とても驚いた出来事がありました。
中学生に「白血病」について質問する機会があり「白血病って何かな?」と聞いたときのことです。

白血病はすごく怖い病気。髪の毛が抜けて、体もしんどくなって、最後はみんな亡くなってしまうんでしょ?
その子はそう話してくれました。
私は、まるで何十年も前の白血病のイメージにとどまっているように感じて、戸惑ってしまいました。
よくよく聞いてみると、小学校の道徳の授業でそのような説明を受けたとのこと。



それなら、そう思い込んでしまっても仕方がないのかも。
…でも、今の白血病は治療法が大きく進歩し、昔のイメージとはかなり違います。
今回は、皆さまに白血病について正しい理解を持っていただきたいという思いで書きました。
白血病は「癌」とは違う病気
白血病を説明するときに、患者さんにわかりやすいように「血液の癌です」と伝える医療従事者の方がいらっしゃいます。



私は、これは誤解を招きやすいため適切ではないと感じています。
なぜなら白血病は、癌とは性質がまったく違うのです。
違い①発生部位
まず、発生部位の違いがあります。
癌は主に「上皮細胞」から発生し、臓器や組織内に固形の腫瘍を形成します。
一方、白血病は「骨髄の造血幹細胞」が異常化したもので固形腫瘍は作らず、白血病細胞が血液や骨髄内で増殖・循環します。
違い②治療反応
もう一つの大きな違いは「治療の効きやすさ」です。
癌(固形腫瘍)は進行度や種類によって治療効果に大きな差があり、必ずしも治療が効果的とは限りません。
一方、白血病には治療がとてもよく効くタイプが存在します。



もちろん種類によって難しい場合もあります。
特に小児白血病、子どもがかかる白血病の治療成績はかなり高く、治る可能性が非常に高い病気です。
不確かな情報に惑わされないこと
以前、「癌に対する抗がん剤治療は無意味だ」と発信している医師のSNSに、自分の子どもが白血病と診断されたお母さんがコメントしているのを見かけたことがあります。
「子どもが白血病と診断されました。輸血も抗がん剤の治療も受けさせたくない。白血病の抗がん剤も、○○先生のおっしゃるように身体に悪いものだから受けない方がいいですよね」と。
さらに別の方が、「白血病は血液の癌ですもんね。抗がん剤は良くないのでは?」とコメントしていました。



私は思わず以下のようにコメントしました。
「白血病は確かに『血液の癌』と呼ばれることがありますが、性質はまったく異なります。特に小児白血病は、治療によって完治を目指せる病気です。輸血や抗がん剤を拒むのではなく、主治医に率直に不安を伝えてください。もし主治医に話しづらいなら、別の病院でも構いません。小児白血病を治療できる医師に一刻も早く相談してください」
こうお伝えしたのは、小児白血病では何よりも早期治療が大切だからです。
輸血を行わなければ命に直結する危険があり、昨日まで元気だった子が突然重篤化することも珍しくありません。
実際、研修医時代に、白血病の発見が遅れて血小板が著しく減り、脳出血を起こして意識が戻らなかったお子さんがいました。



これは私が今でも忘れられない出来事です。
白血病治療の現実
白血病を治すためには、長期にわたって治療が必要です。
患者さん本人はもちろん、家族にとっても大きな負担となります。



血液内科医や小児科の血液疾患専門医など、治療に携わる医療従事者の献身には頭が下がります。
「簡単な手術で治る」「少し薬を点滴すれば治る」というものではありません。
治療の過程にはいくつもの山があり、その山を一つひとつ越えていかなければならないのです。
治療の流れは、以下のようになります。
- 寛解導入療法: 白血病細胞を検出限界以下まで減らす
- 寛解後療法: 残存する白血病細胞を更に減らす
- 維持療法: 長期間にわたり再発を防ぐ
- 中枢神経系予防: 脳・脊髄への浸潤を防ぐ
急性リンパ性白血病の場合、治療期間は約2~3年に及びます。
この間、感染予防のための隔離期間、副作用による体調不良、学校生活の中断など患者と家族には大きな負担がかかります。



また治療の一つとして骨髄移植がありますね。
自家移植では、患者自身の造血幹細胞を使用、同種移植ではドナーから造血幹細胞を提供してもらいます。
骨髄移植では、HLA(ヒト白血球抗原)の適合性が重要です。
兄弟姉妹間でも完全一致する確率は約25%程度とされており、多くの患者は骨髄バンクなどを通じて非血縁ドナーを探す必要があります。
まとめ
今回は、白血病についてお伝えしました。
かつて不治の病と考えられていた小児白血病も、今では完治を目指せる時代になりました。
古い情報や偏見に基づいた判断ではなく、最新の医学的知見に基づいて適切な治療を受けることが何より重要です。



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