肉腫という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。
肉腫は、発症頻度は低いものの、年齢に関係なく起こる可能性がある病気です。

癌とはどのように違うのでしょうか。
今回は、肉腫の特徴や治療法、そして癌との違いについて解説します。
癌と肉腫の違いについて
人の身体には、本来自分の細胞なのに制御がきかなくなり、病気を引き起こすものがあります。
ほとんどの細胞は、ある一定期間が終われば死に、また新しい細胞が生まれるというサイクルを繰り返しています。
この細胞のサイクルがうまく回らなくなり、細胞が増え続けてしまう病態が、癌だったり、肉腫だったりします。



癌と肉腫は、どの細胞から悪性腫瘍が発生したのかによって変わります。
- 上皮細胞という、体の表面や内臓の一部を覆っている細胞であれば、『癌』
- 血液系の細胞であれば『白血病』や『悪性リンパ腫』
- 筋肉や脂肪、骨などの細胞であれば『肉腫』
ちなみに、白血病をわかりやすいように「血液の癌」と言ったりしますが、発生する細胞の種類や性質が全く違うことは知っておいていただきたいです。



白血病については、こちらにて解説しています。


肉腫の特徴
肉腫はとてもたくさんの種類があります。
代表的なものは以下です。
- 骨肉腫:主に10代の骨に発生
- 軟部肉腫:筋肉や脂肪組織に発生
- 横紋筋肉腫:筋肉の細胞から発生
- ユーイング肉腫:骨や軟部組織に発生
発生頻度は癌に比べると低いです。
とはいえ、肉腫は年齢に関係なく発生することがあります。



その理由は発生原因にあります。
癌は加齢による細胞の蓄積的な変化が関与し、年齢が高くなるほど起こりやすくなります。
一方、肉腫は突然の遺伝子変異が原因となる場合が多いことから若い世代にも発症し得るのです。
そのため、肉腫は小児や若年成人にも決して珍しくない病気といえます。
私が見てきた症例
若い方に発症する、子宮や膣のポリープにみえるけれど実は肉腫という病気は、胎児性横紋筋肉腫(ブドウ状肉腫)といいます。
『性行為の出血』の記事で詳しくお伝えしています。





この病気がよく発生するのは3歳頃とされていますが、私が今まで経験した症例は中学生と高校生でした。
肉腫は、外見上は良性の病気と区別がつきにくい場合があるため、診断や治療のタイミングが遅れてしまうこともあります。
若い方でも異常な出血やしこりを感じた場合には、ためらわずに医療機関を受診することが大切です。
肉腫の治療について
肉腫は、ひと昔前は不治の病と言われていましたが、現在は効果の高い治療方法がたくさん出てきています。



その結果、治療成績は向上しています。
肉腫の主な治療法
- 外科手術:腫瘍の完全切除
- 化学療法:抗癌剤による治療
- 放射線治療:放射線による治療
- 分子標的治療:特定の遺伝子変異を標的とした治療
これらを組み合わせた集学的治療により、多くの患者さんで良好な治療成果が得られるようになってきています。
早期発見が重要
肉腫は進行が早い場合もあるため、早期発見が非常に大切です。
以下のような症状がある場合は、専門医への相談をおすすめします。
- 急速に大きくなるしこりや腫れ
- 痛みを伴う腫瘤
- 原因不明の骨の痛み
- 異常な出血(特に若い女性の場合)
肉腫は年齢を問わず発症する可能性があり、良性の病気と見分けがつきにくいこともあります。



気になる症状があれば、自己判断せずに早めに医療機関を受診してくださいね。
まとめ
今回は、肉腫について解説しました。
肉腫の発症頻度は低いですが、若い世代に起こってもおかしくないため注意しておきたい病気です。
実際にお子さんを肉腫で亡くされ、支援を必要とするご家族もいます。
小児がんの子どもたちを応援するために設立された「168(いろは)レモネード」というブランドがあります。
チャリティグッズのひとつに “A future for our children(子どもたちの未来のために)” と刻まれたストラップがあります。



私自身「少しでも病気と闘う子どもたちを応援したい」という思いから使わせてもらっています。