「私は肝機能に関しては大丈夫!」
そう思って生きてきました。
健康診断は毎年受けているし、肝機能の数値も正常範囲でお酒も飲まない。
だから何の問題もなく、元気だと思っていました。
でも、ある春の検査結果を見返したとき気づいてしまいました。
私は、安全ではなかったということに。
よりか先生医師としては、情けない話です。
この記事は、過去の私と同じように「大丈夫」と思い込んでいる方に向けて書きました。
思い込みが一番危ない
私は病理医として毎日がんの組織を診断し、ステージを決め、予後を予測しています。
顕微鏡の向こうに広がる肝硬変の組織、線維化が進んだ肝臓、そしてやがてがんを生んでいく、その経過。



私は、それらをよく知っています。
私の腹囲は87センチ、運動はほとんどしないのにおやつは毎日欠かしません。そして、日々ストレスは全方向から降っています。
それでも、ALT(肝臓の数値)が正常だから大丈夫と思い込んでいました。
疲れやすくなったり、痩せにくくなったりしたと感じたときは、年齢のせいだと思っていました。
朝起きて、家のこと、仕事のこと、子どもで大忙し。気づけば夜が来て、また朝が来る。
そんな毎日の中で、自分の体のことは後回しでした。
「寝ればなんとかなる」
「ほかの先生はもっと頑張っている」
「検診も受けているから大丈夫」



そう自分に言い聞かせて。
私は40代ですが閉経していません。
ただ、エストロゲンは閉経よりずっと前から、少しずつ減り始めます。
エストロゲンが減ると、体は細胞のレベルから変わっていきます。
血管は硬くなり、脂肪はたまりやすくなり、炎症は起きやすくなる。
肝臓も例外ではありません。
「まだ大丈夫」は、裏を返せば「ちょうど変わり始めている時期」なのかもしれない。
私は、それに気づいていませんでした。
脂肪肝=肥満の人がなるもの?
「脂肪肝」という言葉を聞いたとき、肥満の人がなるものというイメージがないでしょうか?
しかし、痩せていても、お酒を飲まなくても脂肪肝になることがあります。



脂肪肝は、太っているかどうかだけで決まるわけではないのです。
鍵を握るのは、体の「代謝」です。
糖や脂質をうまく処理できない状態、つまり代謝の異常があると見た目が痩せていても、肝臓に脂肪が溜まっていきます。
このような理解が世界的に共有されるなかで、医学の呼び名も、NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)からMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)へと変わりました。
脂肪肝を、肝臓だけの病気としてではなく、体全体の代謝が発するSOSとして捉え直したのです。
そして脂肪肝は多くの場合、自覚症状のないまま進んでいきます。
症状が現れたときには、体は長い間戦い続けていたということです。



病理医として、「沈黙の結末」を毎日のように見ています。
検査で気づいたこと
春の検査では、AST・ALTが少し高くなっていました。
そのときの私は、「疲れてるだけかな」と流したのですが数ヶ月後、ふと思い立ち、ある指標を計算してみたのです。
それがFIB-4(フィブフォー) という指標。



肝臓の線維化リスクを評価する数値です。
計算してみると春の私は、1.7 くらいでした。
- 1.3未満は、今のところ大丈夫
- 1.3〜2.67は、立ち止まって労わるサイン
1.3を超えていたことがわかった瞬間、胸がじんとしました。
線維化が進んだ肝臓はもう元には戻りません。
固くなった組織は、血流を阻み、細胞を壊し、やがてがんを生みます。
そして最近の研究では、MASLDがある人は、肝臓だけでなく、他の臓器のがんリスクも高まることが分かってきています。



詳しいエビデンスは有料記事でお伝えしています。


でも、その前の段階なら。生活を変えれば脂肪肝も、軽い線維化も戻る可能性がある。
そして秋。
もう一度計算したら、1.3に戻っていました。
組織レベルで想像すると、膨らんでいた肝細胞が少し落ち着き、炎症の波が引いていく様子が見えるようでした。



肝臓は何も言わずに支え続けてくれていたんです。
気づくことで未来は変わる
私が本当に目指しているのは、「がんを診断する」ことではなく、「診断する必要のない世界」です。
病理医として毎日、取り返しのつかない段階まで進んだ肝臓の組織を見ています。
でも線維化が始まった初期の段階であれば、生活を変えることで戻る可能性があります。



その入り口に立つために必要なのは、まず「気づく」ことです。
FIB-4は、難しい数字ではありません。
すでにあなたの検査結果の中にある数字で計算できます。
必要なのは年齢、AST、ALT、血小板の4つだけです。
痛くないし、新しい検査も必要ありません。
手遅れになる前に、元気なうちにこそ、知ることから始めましょう。
まとめ
肝臓は、最後まで健気に黙っています。気づいたときには手遅れ、ということも少なくありません。



だから、今気づけたあなたは強い。
変化は、一気に起こさなくてかまいません。
ただ、自分の体を見てあげるだけでいいのです。
この記事では、わたしの気づきとFIB-4という指標の「存在」をお伝えしました。
でも、こう思った方もいるかもしれません。
「FIB-4どうやって計算するの?」
「数値が1.3以上だったら何をすればいい?」
「MASLDとがんの関係は?」
「具体的に何から始めればいい?」
そんな方のために、詳しい実践ガイド編として有料記事をご用意しています。
- FIB-4の計算方法と無料ツールの使い方
- 数値別の具体的な対応ステップ
- MASLDとがんリスクの関連
- 今日からできる「がんばらない肝臓ケア」5つ
- 春と秋の数値変化の詳細なストーリー


あなたの体にも、きっと言いたいことがあります。
どうか、耳を傾けてあげてくださいね。



