マンモグラフィを受けるべきかどうか。
乳がん検診の話になると、必ずといっていいほど出てくるテーマです。
デンスブレスト(高濃度乳房)の方にはエコーの方が向いている、という話は広まってきました。
よりか先生でも今回お伝えしたいのは、それとは別の話です。
病理医として、マンモグラフィに対して消極的になる場面が、もう一つあります。
マンモグラフィで「乳がんが増えた」は本当か?
「マンモグラフィが普及したことで、乳がんが増えている」という声があります。



でも私はそうは思っていません。
剖検輯報(ぼうけんしゅうほう)という、病理解剖で得られた全症例をまとめた統計があります。
昔の病理解剖では、生前に診断されなかった癌が見つかることがよくありました。
ただ、解剖の時に小さな乳がんを積極的に探すかというと、それはしません。



臨床的に乳がんが疑われる場合や体表から触れるものは調べますが、そうでなければ細かく注視することはないんです。
つまり、昔から小さな隠れ乳がんはあったはずですが、可視化されていなかっただけと考える方が自然です。
マンモグラフィのせいで乳がんが増えたのではなく、気づける人が増えた、ということです。
放射線リスクについて
「マンモグラフィは放射線を浴びるから危険」
「乳がん発生装置だから受けるな」
という極端な意見も目にします。



確かに放射線被曝のリスクはゼロではありません。
でも、年間数回の検査程度であれば、影響はほとんどありません。
受けずに発見が遅れるデメリットの方が、はるかに大きいと思っています。
私がマンモグラフィに消極的になる理由
私はマンモグラフィに消極的です。



常々、部分切除後のフォローをマンモグラフィでやるのは嫌だなと思っています。
もちろん、放射線の心配があるからではありません。
手術の傷跡や放射線治療後の硬化がある状態で乳房を圧迫される痛みと心理的ストレスを想像すると、胸がきゅっとなるからです。
再発かどうか確認するための検査自体が、つらい体験になってしまうこと。
これは、検診を「続ける」ことを考えたとき、見過ごせない問題だと思っています。
「制度」と「個人」は別の話
なぜ検診でマンモグラフィが推進されているのか
検診の場でマンモグラフィが選ばれる理由は明快です。
時間、人員、設備、コストすべてをひっくるめたとき、効率的で標準化できる検査だからです。



制度としては、理にかなっています。
でも、「制度として最適」と「個人にとって最適」は、必ずしも一致しません。
エコー(超音波)という選択
がんを見つけられるかどうかという一点だけで見れば、エコー検査(超音波)だけでも十分だと私は思っています。
特に日本人女性は乳腺が密なタイプの方が多く、マンモグラフィでは白く写って見えにくい、いわゆるデンスブレストの問題があります。
エコーが得意な技師さんにあたれば、マンモグラフィだけよりも見つけやすいことがあります。
まとめ
マンモグラフィも、エコーも、MRIも、それぞれに得意分野があります。
完璧な検査は存在しません。大切なのは「組み合わせ」と「継続」です。
単発の検査ではなく、変化を見ること。



フォローアップは、第二の診断です。
病理診断書にも、マンモグラフィの一枚の画像にも、その人の身体の構造・年齢・ホルモン状態・授乳歴、いろんな情報が詰まっています。
どんなに優秀な検査にも、見えない部分はあります。
だからこそ、「検査を受けたから安心」ではなく、「検査で自分の体を知る」。



それが、本来の目的だと思っています。
検査は、「安心」を買うためのものではなく、「気づき」を得るためのもの。
検査を受けた日を、自分の体と向き合った記念日だと思えたら、それはもう立派な自己投資です。









