よりか先生こんにちは。病理医のよりかです。
「胸にしこりがある気がする…」
「検診で要精密検査の通知が来た…」
そんな時、まず頭に浮かぶのは「どこに行けばいいの?」という疑問ではないでしょうか。
近所の乳腺クリニック?それとも大きな病院?かかりつけ医に相談すべき?



不安になっちゃうよね。
今回は、このようなときの「最初の一歩」について、病理医の視点からお話しします。
選択肢は大きく3つ



しこりが見つかった時や要精査の通知があった時、受診先の選択肢は主に3つ考えられます。
①近所の乳腺クリニック(個人規模)
専門性が高く、予約が取りやすいことが多いです。
マンモグラフィとエコー検査を受け、必要があれば針生検も行います。
②地域の中核病院(私立や市立病院クラス)
検査体制が整っており、手術が必要な場合はそのまま対応できることもあります。
常勤の病理医がいる病院といない病院があるため、事前に確認しておくと安心です。
③かかりつけ医(総合内科など)
かかりつけ医がいる場合、紹介状を書いてもらい、大学病院などへスムーズに進むことができます。



どれを選んでも間違いではありませんが、選んだ先によってその後の流れが少し変わってきます。
病理診断の流れ
針生検を受けると、採取した組織は病理診断に回されます。



ここで「検査センター」という言葉が出てきます。
検査センターとは?
複数の病院やクリニックから検体を集めて病理診断を行う施設です。
①の乳腺クリニックや、常勤病理医がいない②の病院では、検査センターに外注することが多いです。
病院の常勤病理医とは?
その病院に所属している病理医です。
規模の大きな中核病院や大学病院では、常勤病理医が診断します。



どちらがいい、悪いという話ではありません。検査センターも病院の病理医もそれぞれの役割があり、日本の医療を支えています。
手術する病院で診断が見直されることも
もし針生検で「乳癌」と診断され、手術が必要になったとします。
最初に受診したクリニックや病院では手術ができない場合、大学病院などを紹介されます。
その時、手術予定の病院で、もう一度病理診断が見直されることがあります。
「え?診断が確定したのに、また見るの?」そう思われるかもしれません。



でも、これは医療安全のための大切なプロセスなんです。
手術する病院の病理医が、最初の病理標本(プレパラート)を借りて再度確認します。
診断の一致を確認し、より詳しい情報を得るために行われますが、その結果、診断が少し変わることもあります。
「誤診だったってこと!?」と思われるかもしれませんがそれは違います。
これは「誤診」ではなく、診断の解像度が上がったということです。



病理診断には「物差し」と「役割」の違いがあるんです。
最近話題のラジオ波焼灼術(RFA)について
最近、乳癌治療でラジオ波焼灼術(RFA)という新しい選択肢が出てきました。
切らずに治療できる低侵襲(体への負担が少ない)な方法として注目されています。
ただし、RFAはどの病院でもできるわけではなく、適応基準がかなり厳しく設定されています。



RFAを行う病院では、必ず認定を受けた病理医が診断を再評価するシステムになっています。
そのため、最初の病院で「手術適応」と言われていても、RFA施設で再評価した結果、診断が変わることもあるのです。
「診断が変わるってどういうこと?」
そう思われた方は、ぜひ続きの有料記事も読んでみてください。
病理診断の「裏側」について、詳しく解説しています。


複数の病院を経ることの意味
病院を紹介されて別の病院に行って、また検査してとなれば時間も手間もかかって大変です。
たらいまわしにされているような気になる人もいるかもしれません。
ただ、いろんな医療従事者の目を通るというメリットもあります。
別の施設の医師や病理医が見ることで新しい視点が加わり、見落としが防げて、より総合的な判断ができます。
もちろん、その過程で不安や苦痛を感じることもあるでしょう。
「なぜこんなに時間がかかるの?」「また検査?」と思うこともあると思います。
でも、その結果として、あなたにとって最善の治療方針が見えてきます。



私は大切なのは、これからどうするかを考えていくことだと思います。
大きな病院に行って良性となれば、「近所のクリニックでよかった」と思うかもしれません。
逆に、近所のクリニックで診断がついて大学病院に紹介されたら、「最初から大学病院に行けばよかった」と感じるかもしれません。
でも、それはすべて結果論です。
どこを選んでも、そこから最善の医療に繋がる道はあります。
日本の医療システムは、どの入口から入っても、必要な治療に辿り着けるように設計されています。
だから、「あの時の選択が間違いだった」と後悔する必要はありません。



すべてはご縁なのだと思います。
まとめ
最後に、もう一つ大切なことをお伝えします。
医療は統計とエビデンスに基づいています。
つまり、多くの人に当てはまる最善を目指しているのです。
すべての人に100%当てはまる治療や診断は、残念ながら存在しません。
でもそれは、医療者が手を抜いているからではありません。
もし100%を求めて確実でなければ何もしないのなら、今助けられている多くの命が失われます。
だから医療は、不完全さを認めながら、それでも最善を尽くすという営みなのです。
診断が変わることも、複数の病院を経ることも、その過程の一部です。
それは医療が進化し、解像度が上がっている証拠だと私は考えています。
あなたが今、不安を抱えているならどの選択をしても大丈夫と伝えます。
日本の医療は、あなたを支えるシステムがあります。



私と一緒に、これからのことを考えていきましょう。











