「免疫を上げる」は危険な言葉?!|病理医が違和感を覚える理由

「免疫を上げましょう!」

テレビ、SNS、サプリメントの広告でよく見かけるこの言葉。

よりか先生

私はこの言葉を聞くたびに、少しだけ背筋が寒くなります。

なぜなら免疫は「上げるもの」ではないからです。

目次

私が自分の頚管ポリープを顕微鏡で見たときのこと

少し前、私は小さな頚管ポリープを切除してもらい、組織を顕微鏡で見ました。

そこで見たのは、異常に多い血管、豊富な炎症細胞、とても「反応性」が高い組織でした。

その時、はっきりと思いました。

よりか先生

ああ、ここはやっぱり免疫の場所なんだな。

子宮頚管という場所は外界と体の境界にあって、体の中に入ってこようとするものに対し、常に「これは許していいものか?」を判断し続けている場所なんです。

多くの人が持つ免疫のイメージ

多くの人が思っている免疫のイメージは、たぶんこうです。

  • 強ければ強いほど良い。
  • 高ければ病気にならない。
  • 上げれば上げるほど健康。
よりか先生

でも、病理の世界で見ている免疫は、まったく違います。

免疫とは、敵を倒す力ではなく、見分けて、やりすごし、壊しすぎない力です。

つまり精度と制御のシステムであり、免疫は「強さ」ではなく「バランス」ということがわかります。

実は免疫が強すぎる状態は病気

病理医は、免疫が過剰になると何が起きるかを日常的に見ています。

  • 自己免疫性疾患として、関節リウマチ・全身性エリテマトーデス・シェーグレン症候群。
  • アレルギーとして、食物アレルギー・花粉症・アトピー性皮膚炎。
  • 薬剤性の臓器障害として、薬剤性肝障害・薬剤性腎障害・薬剤性肺炎。

これらすべて、免疫が頑張りすぎて、身体を壊している状態です。

顕微鏡で組織を見ると、リンパ球がびっしり集まって正常な細胞を攻撃している像が見えます。

よりか先生

「免疫が高い=健康」ではないことを目の当たりにする瞬間です。

サプリメントや健康食品で起きていること

実際にサプリメントや健康食品では以下のようなことが起きています。

免疫は量ではなく閾値で反応

「たくさんの人が飲んでいるのに、一部の人だけが重症になる」

サプリメントによる肝障害・腎障害でよく見るパターンです。

これは毒が溜まったのではなく、免疫がスイッチを入れたと言えます。

よりか先生

免疫は、量ではなく閾値で反応します。

閾値は人によって全然違うし、いつスイッチが入るかは誰にもわかりません。

自然由来・食品だから安全は免疫には通じない

食べ物ですら卵・小麦・ナッツ・エビなどで、重篤な免疫反応(アナフィラキシー)が起きます。

それなのに成分を濃縮して毎日摂取し、長期間続けるサプリメントが、免疫に何も影響を与えないと考える方が不自然です。

よりか先生

自然由来は、安全性の保証ではありません。

むしろ自然界には、免疫を刺激する物質がたくさん存在します。

それが植物の防衛機構でもあるのだから当然です。

免疫は見張り番であって「戦闘狂」ではない

免疫の本来の役割は、不要なものを排除し、必要なものは許容し、体の秩序を保つこと。

つまり治安維持です。

よりか先生

私たちの社会でも同じことが言えます。

警察の力が強ければいいというものではありませんよね。

過剰な取り締まりは、社会を息苦しくします。

免疫を上げる」という言葉は、この繊細なシステムに対して、アクセルだけ踏めと言っているようなものです。

免疫には、ブレーキも、ハンドルも必要なのです。

まとめ

免疫に対して必要なのは、上げることでも、強くすることでもなく「乱さないこと」です。

  • 不要な刺激を減らすこと
  • 正体不明のものを入れすぎないこと
  • 体が出した違和感を無視しないこと
  • 睡眠・栄養・ストレス管理といった基本を大切にすること
よりか先生

これが、いちばん安全で、いちばん医学的です。

腸活も、運動も、もちろん良いものです。

でも「免疫を上げるため」という言葉で何かを追加しようとする前に、まず「今の免疫を乱していないか」を考えてほしいと思っています。

健康とは、足し算ではなく、調律です。

私は「免疫を上げる」という言葉が流行るほど、免疫のことが誤解されていくと危惧しています。

よりか先生

免疫は味方ですが、暴走すれば最も危険な敵にもなるのです。

よりか先生
病理医
病理医として、日々たくさんの「命」と向き合っています。このブログでは、乳がんやがん検診のこと、そしていのちの大切さについて、わかりやすくお伝えしていきます。
医師として、そして子育て中の母として、読者の方が少しでも安心できるような情報をお届けしています。
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