よりか先生知人から聞いた話です。
ある人が毎年の健康診断で腎機能の数値が少し悪く、気になっていました。
近所の消化器内科では「大丈夫ですよ」と言われ続けていたそうです。
ところが、別の理由で腎臓内科を受診したとき、医師からこう告げられました。
「3年後には透析が必要になります」



自覚症状は、何もなかったといいます。
なぜこのようなことが起こったのでしょうか。
今回は、その理由を解き明かすため、クレアチニンとeGFRという数値について解説していきます。
腎臓は自覚症状がほとんどない
腎臓が怖いところは、かなり機能が落ちても症状が出ないことです。
心臓なら動悸、胃ならみぞおちの痛みと、体がサインを出してくれます。
でも腎臓は、半分以上の機能が失われてもなんとなく疲れやすい程度で、普通に生活できてしまいます。



痛くないから気づけないのです。
腎臓はもともと左右に2つあり、片方を失っても残り1つで生きていけるほどの余力を持っています。
健康な人が腎臓を1つ提供する生体腎移植が成り立つのも、予備能力の大きさゆえです。
裏を返すと、多少機能が落ちても残った力でカバーできてしまうため、体は警告を出さないのです。
検査の数値がゆっくりと悪化していく一方で、本人は何も感じない、という状態が何年も続きます。
ただし腎臓が弱ってくると、以下のようにわずかながらサインが出ることもあります。
- 足のすねや甲がむくみ、靴下の跡がくっきり残る
- 夜中に何度もトイレで目が覚める
- 尿が泡立ち、なかなか消えない



ただし、サインが出るころには、機能がかなり低下していることも少なくありません。
強いだるさやむくみを自覚して受診した時点で、eGFRが30を切っていたというケースもあります。
一度失われた腎機能は二度と戻らないので症状を待っていては遅いのです。
クレアチニンよりもeGFRの数値が大切
健診結果を見るとき、多くの方が「クレアチニン」という数値を確認します。
でも実は、クレアチニンより大事な数値があります。
それが eGFR(推算糸球体濾過量/すいさんしきゅうたいろかりょう) です。


クレアチニンは「血液中の老廃物の濃度」を示す数値で、高いと腎臓が弱っているサインです。
でもこの数値、年齢や体格によって「正常範囲」が大きく変わるため、素人には判断しにくいものです。
一方eGFRは、クレアチニンの値を年齢・性別で補正して「腎臓がどのくらい働いているか」をパーセントに近い形で示したものです。



腎臓の「残りバッテリー」と思ってください。
| eGFR | 状態 |
|---|---|
| 90以上 | バッテリー満タン |
| 60未満 | 慢性腎臓病(CKD)の疑い |
| 30未満 | 透析が視野に入る危険水域 |
| 15未満 | 腎臓がほぼ機能を失った状態 |
数字が下がるほど、腎臓が肩代わりできる仕事は減っていきます。
クレアチニンは、食事・水分・運動量によって日々変動します。
だから「先月より下がった、よかった」と安心しても、3年前と比べると確実に上がっている、ということが起きます。



これが冒頭の話で見落とされたポイントです。
自分で腎機能の異変に気づくための確実な方法は、1枚の健診結果ではなく、3〜5年分を並べて「トレンド」を見ることです。
まとめ
腎臓が心配だから腎臓内科に行こうと思っても、実は腎臓内科を単独で標榜しているクリニックは全国的にほとんどありません。



多くは大病院の中にある科です。
だからこそ、かかりつけの内科で定期的に血液検査を受け、eGFRの数値を自分で把握しておくことが現実的な対策になります。
そして健診結果を見るとき、クレアチニンの隣にあるeGFRを確認してみてください。
有料記事では、eGFRが具体的にどの数値になったら何をすべきか?
そして、「減塩塩」を使っていい人・危ない人の境界線はどこかなど、腎臓内科医と病理医の視点を合わせて、健診結果でどう判断するかを具体的にお伝えします。





