「大腸がんが女性の死亡原因1位」
このニュースを聞いて私は正直、悔しかった。
なぜなら、大腸がんは全く怖がらなくてよいがんだからです。
大腸がんの多くは、腺腫というポリープを経てがんに進行しますが、内視鏡検査でポリープを見つけた時点で切除すれば、がんになる前に取り除けます。
よりか先生それなのに死亡率1位なのは、惜しすぎます。
大腸がんを防ぐために大切なのは、「大腸カメラを受ける決心をいつするか」、ただそれだけです。
今回は、病理医として働く私が日々思っていることをお伝えします。
大腸がんについて
まず、大腸がんについてわかりやすく説明します。
日本で最も多いがん
悪性腫瘍の中で最も多いがんであり、年間15万人以上が大腸がんと診断されています。(がん罹患全体の15.6%)。
年間15万人ということは、毎日411人が新たに大腸がんと診断されている計算になります。
私が医者になったのは2008年ですが、4年後の2012年に大腸がんが1位になり、以降この状況が続いています。



わずか十数年で急激に増えたんです。
死亡率も高い
日本では、年間5万3千人以上が大腸がんで死亡しています。
これは、肺がんに次いで2位の死亡率で、がん死亡全体の13.8%を占めます。



女性だけで見ると死亡原因の1位です。
予防できるがん
大腸がんは予防できるがんです。
大腸がんのほとんどは「正常粘膜」→「腺腫」→「癌」という順番で発生します。
腺腫(ポリープ)という前癌病変を経由するのです。
ただ、正常粘膜からがんになるまでには、数年から10年以上かかります。
大腸カメラを受けて腺腫が見つかったら、基本的にはその場で切除してくれます。
- 見つける
- 取る
- 予防する



これが一度にできるのです。他の癌ではこうはいきません。
アメリカの研究では、腺腫性ポリープを切除することで大腸がんの罹患率が76〜90%抑制可能と報告されています。
大腸カメラを受けるだけで、大腸がんを8〜9割予防できるのです。
問題は大腸カメラを受ける決心をいつするか
大腸がんをいたずらに怖がらなくてよい理由がわかったのではないでしょうか?
でも、その恩恵を受けられるのは大腸カメラを受けるという決心をした人だけです。
「恥ずかしい」
「痛そう」
「前処置がイヤ」
「忙しい」
大腸カメラに抵抗感があるのは分かりますが、この状況は本当に惜しすぎます。
裏を返せば、大腸カメラに対する心理的ハードルだけで死亡率1位になっているのです。
便潜血陽性になったときでもなく、家族が大腸がんになったときでもなく、自分が腹痛で苦しんだときでもなく、40歳を超えたら一度は大腸カメラを受けるべきです。



「いつか受けよう」は、「受けない」と同じですよ。
どのくらいの頻度で大腸カメラを受けるべきかについてですが、日本消化器内視鏡学会のガイドラインでは以下のように定めています。
- 何もなかった場合は5年後
- 小さな腺腫(低異型度)を1〜2個切除した場合は5年後
- 小さな腺腫9個までは3〜5年後
- 小さな腺腫が10個以上または高異型度腺腫が1つ以上の場合は1年後
正常粘膜から腺腫を経てがんになるまでには時間がかかるため、1回受けて何もなければ5年間隔で十分です。
ただし、これは腕の良い内視鏡医がしっかり観察して見落としなく取ってくれたという前提です。
大腸カメラを受けて腺腫を取ってもらったあとは、その後のフォローがとても大事です。



主治医が1年後の検査を勧めてきたら、必ず受けてください。
大腸は約1.5メートルで曲がりくねっており、ひだの裏側や屈曲部、便が残っていた部分は見にくいため、見落としが絶対にないとは言えません。
また、高異型度の腺腫は取り残しがあると再発することがあります。
腺腫の異型度は内視鏡で取った時点では分からず、病理医が顕微鏡で見て初めて分かるものです。
「これは低異型度かな?高異型度かな?」と、病理医の間でも意見が分かれることも珍しくありません。
だからこそ「取ったから安心」ではなく、1年後にもう一度確認することが大事なのです。



大腸カメラは、家族歴の内容によっても変わるので消化器内科で相談してくださいね。
大腸がんの注意点
ここで大腸がんの注意点を見ていきましょう。
便潜血検査だけでは安心できない
便潜血検査は便に混じった血を調べる検査ですが、出血しないタイプの腺腫や、出血量が少ない病変は見逃されます。
特に大腸の奥側(右側結腸)にできるがんは、便がまだ液体や泥状であるため摩擦による出血が起きにくく、検出されにくいとされています。



便潜血が陰性でも安心できません。
大腸は筋層が薄い
大腸は、胃と違って筋層が薄い臓器です。
そのため、大きな病変を内視鏡で切除しようとすると穿孔(壁に穴が開くこと)のリスクが上がります。
腺腫は小さいうちに切除するほど安全です。
直腸がんはストマになることがある
直腸がんができる位置によっては、永久的な人工肛門(ストマ)が必要になることがあります。
ある有名ながんセンターのデータでは、直腸がん患者の約88%で肛門温存手術が可能とされています。
言い換えれば、約12%、下部直腸がんに限れば約24%の患者で永久ストマが必要になっています。



私はこの割合は多いと感じますが、あなたはどうでしょう?
がんになったら進行が速い
腺腫からがんになるまでには数年から10年以上かかります。
ところが、いったんがんになるとあっという間に進行します。
癌細胞は正常な細胞より分裂が速く、周囲の組織に入り込み、血管やリンパ管を伝って肝臓などに転移する能力を持ちます。



発見が遅れると手術では取りきれない段階まですぐに進んでしまうのです。
便潜血検査について
「便潜血検査、意味ないって聞いたんですが」という声をよく聞きますので、ここで便潜血検査についても触れておきます。



確かに便潜血検査は偽陰性が多いです。
大腸がんがあっても見逃される確率は、報告によって7〜70%と幅があります。
病変別の内訳は次のとおりです。
- 大腸ポリープ:陰性となるケースが大半
- 早期大腸がん:約半分が陰性
- 進行大腸がんでも約1割が陰性
ただし、便潜血検査の最大の意義は「大腸カメラを受けるきっかけ」になる点にあります。
便潜血陽性になった100人の内訳を見てみましょう。
- 大腸がんが見つかるのは約2〜3人
- 腺腫(治療が必要なポリープ)が見つかるのは約20〜30人
- 異常なし、または痔などが原因の人は約70〜80人
便潜血陽性になっても、大腸がんが見つかるより、ポリープやそのほかの原因であることのほうが多いのです。



だから過度に怖がることなく大腸カメラを受けてください。
免疫法の便潜血検査を毎年受けることで、大腸がん死亡率が60%減少するというデータもあります。
便潜血検査は偽陰性が多いけれど、大腸カメラのきっかけになる。
これを理解した上で毎年受けるのが正解です。
まとめ
大腸がんは怖がらなくてよいがんだということが、少しでも伝わりましたでしょうか。
大腸がんが女性のがん死亡原因の1位というのは、本当に惜しいことです。
繰り返しますが、大腸がんは早期発見で命を守れるがんです。
ポリープの段階で切除すれば、がんになる前に防ぐこともできます。
大事なのは「大腸カメラを受ける決心をいつするか」です。
- 便潜血検査を毎年受けること
- 40歳を超えたら一度は大腸カメラを受けること
- 異常がなければ5年間隔で受けること
- ポリープがあった場合は1年後のフォローを必ず受けること



あなたの大腸を守るために、今日決心して、行動してください。
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